私はGraSPPとオーストラリア国立大学(ANU)のダブル・ディグリーの学生で、2年目をANUクロフォード公共政策大学院で過ごし、環境分野の専攻を修めました。ANUとGraSPPのダブル・ディグリー・プログラムを最初に知ったのは、修士課程のプログラムを探していたときでした。環境政策の課題、とりわけアジア太平洋地域の海洋環境問題に関心を持つ者として、この地域に位置する2つの国で学べることは、逃すわけにはいかない機会でした。私は、2年目にANUのダブル・ディグリー・プログラムへ応募することを見据えてGraSPPに出願しました。東京とキャンベラの両方で1年ずつを過ごした今、両方の場所に身を置いたことが、環境と開発のための政策立案の世界に飛び込むことを可能にしてくれる、ほかにはない経験をもたらしてくれたと言うことができます。
東京での1年目は華々しく始まり、公共政策の確かな基礎を築きながら、教室の外でもさまざまな機会に触れることができました。教室の中では、東京大学海洋アライアンスの一員となり、多様な海洋ガバナンスの課題について学ぶことができました。教室の外では、サンパウロで開催されたGlobal Public Policy Network(GPPN)会議に、チームメイトとともにGraSPPを代表して参加するという栄誉に恵まれ、政策提言を作成して、コロンビア大学やロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)といった政策分野における世界の有力大学の代表たちと競い合いました。GraSPPのコミュニティもまた非常に多様で温かく、歓迎にあふれており、私は居心地のよさを感じ、東京を離れるのが少し名残惜しくなったほどでした。
そんな当初のためらいとは裏腹に、ANUでの学びは、学業の面でも個人的な面でも、私にとって目を見開かされるものでした。 学業面では、環境に関わるさまざまな政策課題に触れ、関連する最先端の理論やツールキットを用いてそれらを分析する方法を学びました。エネルギー政策から先住民主導の土地・海域管理まで、ANUで環境専攻を修めたことで、今日世界に存在する実に多くの環境政策課題について考えることができました。また、ポスト構造主義的な政策分析手法など、環境問題をより注意深く見つめることを可能にしてくれる有用で新しいツールキットにも触れました。 ANUでの学びのハイライトのひとつは、第2学期にリサーチ・コンポーネント(研究科目)に参加したことです。そこでは、東南アジアの沿岸コミュニティについて幅広い研究を行ってきた指導教員のもとで研究に取り組むことができました。アジア太平洋の海洋政策課題に関心を持つ者として、これは学問上の夢の実現でした。ミーティングのたびに指導教員と会うのが楽しみで、インドネシアの遠隔地の沿岸コミュニティに対するダイブツーリズムの生計への影響を研究するためのリサーチ・プロポーザルの作成にあたって、豊かな示唆を与えてもらいました。
学業の外では、結びつきの強いANUクロフォードのコミュニティの一員になれたことに恵まれました。キャンベラに来た当初は、授業でも寮でも教室の外でも、学生同士がいかに密に交流しているかに驚きました。一人での海外生活は初めてで、同期の中で日本国籍は私だけでしたが、さまざまなバックグラウンドを持つ友人をつくるのはとても簡単でした。気がつけば、個人的なことを話したり、長い学問談義に没頭したりできるいくつかのコミュニティに身を置いていました。 キャンベラでの時間をかたちづくってくれたという点で特筆すべきは、私の寮、トード・ホール(Toad Hall)です。築50年の建物は時折設備の不具合があり、共用キッチンは混み合うこともあって、決して五つ星ホテルではありませんでした。しかし、トード・ホールの私のブロックには、気軽に隣人を訪ね、食べ物を分け合い、学問、人生、歴史、政治、その他ほとんどあらゆることについて何時間も語り合えるコミュニティの感覚がありました。クロフォードのクラスメイトたちも同じで、私たちはよくハンコック図書館で夜遅くまで勉強し、プレゼンテーションの練習をし、さまざまなトピックについて議論しました。学業で忙しくないときには、よく街を出て、シドニーやスノーウィー・マウンテンズ、そしてアザラシと一緒に泳ぐことができた海辺の町ナルーマなど、オーストラリアの各地を訪れました。これらの思い出はどれも本当にかけがえのないものであり、ここでできた友人たちとこれからもつながり続けたいと思っています。
GraSPPとANUを通じたこの経験に豊かに育まれ、私は卒業後、開発分野でのキャリアをスタートさせる予定です。両大学での経験を通じて出会った機会と人々がなければ、この道に足を踏み入れることは不可能だったと思います。感謝の気持ちでいっぱいの心でGraSPPとANUを巣立つにあたり、未来の学生の皆さんにも、このエキサイティングなダブル・ディグリーの旅にぜひ参加してほしいと思います。